Interview
京都という価値の深淵に何があるのかを考える
住友商事株式会社 常務執行役員 企画グループ長 CSO
住友商事グローバルリサーチ株式会社 代表取締役社長 兼任
住田孝之さん
1962年生まれ。1985年東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。1993年米国ジョージタウン大学国際政治大学院卒業。経済産業省では、産業政策、FTA等の国際交渉、環境・エネルギー政策、イノベーション戦略などに従事。エコポイントやプレミアムフライデーを立案したほか大阪万博の「命輝く未来社会のデザイン」というテーマを策定。知財戦略推進事務局長としては、知的財産戦略ビジョンをまとめ「価値デザイン社会」を提言。2019年に住友商事(株)に入社し、2024年4月から現職。無形資産など非財務要素を活用した企業の価値創造に焦点をあて、2007年にグローバルなNPOであるWICI(世界知的資産・資本イニシアティブ)を立ち上げ、2022年6月まで会長を務める。
(1)京都という社会の価値をどのように捉えるのか?
−今回のProject Visionの重要な軸に「文化と経済の好循環の創出」を設定していますが、京都という都市の価値を最大限に活かすためには、この好循環の軸をどのように捉えていくと良いとお考えでしょうか。ぜひご意見を伺わせてください。
Project Vision
本事業では、京都市グランドビジョン策定(2025年策定予定)も念頭に持続可能性の高い概念・プロセスを構築するため文化と経済の好循環を生み出す道筋と指標を設計し実践への道へと数年かけて実現させ成功へと導いていく起点を生み出すことが最大のミッションである。 京都の文化資本、社会資本、経済資本をクロスオーバーさせあらゆる課題を解決し、社会的富を生み出す人財、及び、その仕組みを再定義・再構築する必要がある。
住田:京都の場合は特に “求心力” が重要になる。力を持った人がすでに集まっていて、財力、知力、別の能力のある人を寄せてきて、それが文化を形成したり、あるいはそのような環境に触れたいという人もいて。永きに渡り都があったことで、京都には重要な資産が集積されていて、そのような資産を継承した知識人がいて、ビジネスに活かした企業人がいて、そういう集積の本質が何かということを把握していかないと京都ではなくなってしまう。“京都の” 文化と経済の好循環とは何か? その構造解析をしっかりとやっていくことが非常に重要です。さらに、京都の文化とは何か? ということ。人を寄せつけるだけのケイパビリティであり、独自の魅力があって、ハイセンスなバリューに人が寄ってくる。
−人口を増やすという量の話ではなく「質」の話に議論の焦点を当てていくことが重要ですね。
住田:クオリティの高い人を集めるというところが京都の価値ですよね。知的資産経営*のような考え方で京都の過去から現在までを描いてみたらどうなりますか? 京都はどうやって独自の価値を生み出してきたのか? これらを丁寧に解読していかないと、結果的に見誤った課題設定に対する軽々しいビジョンが成立することにも繋がってしまい大事なことが壊れてしまうんですね。京都の文化が続かないのは非常に困る。課題設定をちゃんと定めることがまずは重要な起点になってくるのではないでしょうか。 さらに、京都という社会としての共通価値は非常に大事になりますが、“創造” だけじゃない。価値をidentifyした方がいい。共感する人たちがそれに基づいて価値を生み出していくことになるからです。「だれでもどうぞ」では、文化できない。京都はどういう価値観なのかというところ、私たちはこういうことをやりたい、それに共感する人はどうぞとしないと「京都らしさ」がなくなってしまうと思います。 共通の価値観をシェアできる人はだれでもどうぞなんです。それをシェアできない人まで誰でもどうぞということでは社会や文化にならない。社会制度の仕組みを考える際、それぐらい主張をしながら生きていくことを考えないと生き残ることができないわけです。すべて安易な方に流れてしまって、共通の価値観は全然実現できない、文化に繋がらないということになってしまう。京都としての文化を中心に据えるのであれば、共有できる価値観という観点から何らかの軸を明確にすることが重要。「京都の転生」としての軸は何なのか? これらが腹落ちするものとして考えられていれば、わかりやすく説明をして共通価値に共感する人をどんどん呼んでくることができる。そして「これは違うのではないか」と言ってくれる異端児も大事ですし、真剣に向き合ってチャレンジしてくれる人も大事になりますね。つまり、京都の個性に着目し個性との関係で許容範囲を見定めて、メンバーシップのようなものを見極めていくことがすごく重要だと思います。
*知的資産経営とは、人材、文化、組織力、技術力、ネットワーク、ブランドなど組織が有する目に見えない資産(人間の知的活動の成果物)に着目し、強みや特徴を活かして価値を想像する経営の捉え方を表す。氏が経済産業省知的資産政策室長を務めていた2015年に提唱し、内閣府知的財産戦略推進事務局長を務めていた2018年にまとめた知的財産戦略ビジョンにおいてもその考え方が盛り込まれている。首相官邸ウェブサイト(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html)に、そのメソッドから手法までが紹介されている。
−自律性という “民意” が非常に強いのも、京都の重要な特性だと捉えています。
住田:京都の民意とは、何も考えない市民集団ではなく、非常にレベルの高い集団の考え方を意味しますよね。それは違いますよねと断れる能力と責任を併せ持つ文化がある。洛中には特別な人たちが住んでいた歴史がありますし、外から来た人がおいそれと足を踏み入れずらいところもあるでしょう。場所でそういう制限をしたりして “民のクオリティ” を維持していた。それをどうするのかというのが大きな分かれ道で、それをなくしてしまうと京都ではなくなってしまいますから。
−民意の本質とは何か? それが京都という価値を紐解く重要な鍵になるということですね。
住田:そうですね。京都は本当に個性の塊です。しかも一つのインクルーシブを表していると私は思います。迎合せずに、「あいつとは違う」ことに価値を見出す。いろんな「あいつとは違う」という人が集まる。そして違うけどある意味お互い尊重しあっている。そこがすごく大事で、その人たちが一つのインクルーシブのなかに入ってくる。なんとなく迎合するという社会ではないですよね。それはある種、オープンイノベーションを難しくする要因になるかもしれませんが。 −まさに、自律した個が集まっている状況がいくつも多元的にあることは京都という社会のひとつの表れでもありますね。
(2)地域社会と企業との関わりについて
−企業が地域社会と深く関わり始めようとする動きが日本全体でも少しずつ増えてきているように感じています。今後、企業が地域の社会価値や環境価値の創出に経済価値を結びつけること、さらに今回のプロジェクトでいうと文化価値の創出に経済価値を適切な形で結びつけることも議論していきたいと考えていますが、企業側は地域社会との結びつきにおいて、今後どのような動きを生み出していくことが望ましいと思いますか。
住田:大事なことは、企業にとって自分たちがどのような価値を生み出しているのか的確に認識することであり、同時にどのような価値を生み出したいのかを社会、市場に対して示す、開示・開陳していくことです。私たちはこういう価値を生み出している、生み出したいということを伝えることが投資家に評価されるようになってきている。そのため評価軸も多元的に変わってきている。社会的価値の創出は評価側にとっても重要な評価軸になってきている。創造していく価値を、社会的価値、環境的価値も含めて正確に説明していく。これがすごく大事です。そうすれば、心あるまともな投資家との間ではちゃんと対話することができる。それによって企業の価値、時価総額が決まってくる。世の中の変化を認識しながら、自分の生み出す価値はこれまでは財務価値や経済価値を中心に捉えていたかもしれないけれども、環境価値や社会価値を含めた価値、自分たちが生み出したい価値を明確にして、市場と対話しながら、社会との共有価値が本当は何なのかを追求し実践していくのが望ましいですね。
京都は上から言われてやらない人たちですよね? 放っておいたら企業側から民意として、新しい発想や価値がぽこぽこ出てきた、そういうことを応援する政策が大事です。自発的な動きがあれば応援しますということが京都の政策であってほしいですよね。「行政側と企業が絶対に一緒にやらなきゃいけない」という考え方を一方的に求められると、なかなかやらない気質かもしれない。後押しできるとか、押し付けじゃない政策が重要です。そうすれば、素晴らしいものがいっぱい生まれてくると思うんですね。京都はそういう場所じゃないでしょうか。
(3)創造的都市としての「京都」とは。
−今後、都市全体での創造性を高め、その独自の価値をより一層グローバルな動きや都市の成長へと繋げていくためにも、“京都らしい”オープンイノベーションの在り方をどのように構想していくことが望ましいと思われますか。
住田:京都は基本的に一見さんお断り文化。単に違う文化を入れたらいいのではないかという思想は、「一見さんお断り」的な発想からするとちょっと違いますよね。そこには重要な「審査メカニズム」があるので「一見さん」は審査に通らないんです。オープンイノベーションを妨げると思われるかもしれませんが、それは現在存在している “区切り方”、分野で物事を考えると「一見さん」とコラボすることは難しいでしょう。それぞれの分野のレベルの高いプロフェッショナルが京都にはいる。そういう従来からある分野の考え方ではなくて、新しい切り口でより大きなこと、新しいことを生み出すという課題設定にすれば、特定のメンバーシップを離れた発想が可能になるかもしれない。例えば、「宇宙」とか、今までの発想ではできない切り口での発想が出てくると変わってくるのでしょう。
京都の一流企業がすごいのは、日本の中ですごいのではなく世界で一流なんですね。そもそも京都の企業はグローバルマーケットをターゲットに発想をしている。「グローバルで一番」という視点は、日本の中でも実は京都にしかないかもしれません。「日本一」という発想はないですよね。今のフィールドを超えたものをやってみない? と言い出す人がいれば、オープンイノベーションが可能になってくるかもしれないですね。インテリジェントな京都人から見ても、この人が言うならばという人でないと成り立たないとは思いますが。 すでに素晴らしいケイパビリティがあるだけに、明快な課題、問題設定さえできれば、あとはなんでも実現できる能力がある。非常に知的レベルも高い。社会価値へのシンパシーが強く、利益だけではない哲学的で賢い人たちで、気概も非常にある。オムロンのように哲学者が創業している企業がある。すごくハイレベルですよ、京都は。普通の議論をしていると、京都では意味がないことになってしまいますからね。
−なるほど。非常にレベルの高い「問い」であり「ビジョン」こそが、京都という都市の創造性をより一層高めていく、世界でも唯一の都市で在り続けるということにつながっていくということですね。本日は大変ありがとうございました。
京都市の「カルチャープレナーの創造活動促進事業」*にて採択され実施したプロジェクトの活動報告レポートより抜粋。本レポートは、京都市が目指す「文化と経済の好循環を創出する都市」をテーマに都市構造を読み解き、京都という都市が持続的に発展し続けるための構想を提案しています。
*令和5年度カルチャープレナーの創造活動促進事業〜カルチャープレナー等の交流・コミュニティ創出
Interview
京都という価値の深淵に何があるのかを考える
住友商事株式会社 常務執行役員 企画グループ長 CSO
住友商事グローバルリサーチ株式会社 代表取締役社長 兼任
住田孝之さん
(1)京都という社会の価値をどのように捉えるのか?
−今回のProject Visionの重要な軸に「文化と経済の好循環の創出」を設定していますが、京都という都市の価値を最大限に活かすためには、この好循環の軸をどのように捉えていくと良いとお考えでしょうか。ぜひご意見を伺わせてください。
Project Vision
本事業では、京都市グランドビジョン策定(2025年策定予定)も念頭に持続可能性の高い概念・プロセスを構築するため文化と経済の好循環を生み出す道筋と指標を設計し実践への道へと数年かけて実現させ成功へと導いていく起点を生み出すことが最大のミッションである。 京都の文化資本、社会資本、経済資本をクロスオーバーさせあらゆる課題を解決し、社会的富を生み出す人財、及び、その仕組みを再定義・再構築する必要がある。
住田:京都の場合は特に “求心力” が重要になる。力を持った人がすでに集まっていて、財力、知力、別の能力のある人を寄せてきて、それが文化を形成したり、あるいはそのような環境に触れたいという人もいて。永きに渡り都があったことで、京都には重要な資産が集積されていて、そのような資産を継承した知識人がいて、ビジネスに活かした企業人がいて、そういう集積の本質が何かということを把握していかないと京都ではなくなってしまう。“京都の” 文化と経済の好循環とは何か? その構造解析をしっかりとやっていくことが非常に重要です。さらに、京都の文化とは何か? ということ。人を寄せつけるだけのケイパビリティであり、独自の魅力があって、ハイセンスなバリューに人が寄ってくる。
−人口を増やすという量の話ではなく「質」の話に議論の焦点を当てていくことが重要ですね。
住田:クオリティの高い人を集めるというところが京都の価値ですよね。知的資産経営*のような考え方で京都の過去から現在までを描いてみたらどうなりますか? 京都はどうやって独自の価値を生み出してきたのか? これらを丁寧に解読していかないと、結果的に見誤った課題設定に対する軽々しいビジョンが成立することにも繋がってしまい大事なことが壊れてしまうんですね。京都の文化が続かないのは非常に困る。課題設定をちゃんと定めることがまずは重要な起点になってくるのではないでしょうか。 さらに、京都という社会としての共通価値は非常に大事になりますが、“創造” だけじゃない。価値をidentifyした方がいい。共感する人たちがそれに基づいて価値を生み出していくことになるからです。「だれでもどうぞ」では、文化できない。京都はどういう価値観なのかというところ、私たちはこういうことをやりたい、それに共感する人はどうぞとしないと「京都らしさ」がなくなってしまうと思います。 共通の価値観をシェアできる人はだれでもどうぞなんです。それをシェアできない人まで誰でもどうぞということでは社会や文化にならない。社会制度の仕組みを考える際、それぐらい主張をしながら生きていくことを考えないと生き残ることができないわけです。すべて安易な方に流れてしまって、共通の価値観は全然実現できない、文化に繋がらないということになってしまう。京都としての文化を中心に据えるのであれば、共有できる価値観という観点から何らかの軸を明確にすることが重要。「京都の転生」としての軸は何なのか? これらが腹落ちするものとして考えられていれば、わかりやすく説明をして共通価値に共感する人をどんどん呼んでくることができる。そして「これは違うのではないか」と言ってくれる異端児も大事ですし、真剣に向き合ってチャレンジしてくれる人も大事になりますね。つまり、京都の個性に着目し個性との関係で許容範囲を見定めて、メンバーシップのようなものを見極めていくことがすごく重要だと思います。
*知的資産経営とは、人材、文化、組織力、技術力、ネットワーク、ブランドなど組織が有する目に見えない資産(人間の知的活動の成果物)に着目し、強みや特徴を活かして価値を想像する経営の捉え方を表す。氏が経済産業省知的資産政策室長を務めていた2015年に提唱し、内閣府知的財産戦略推進事務局長を務めていた2018年にまとめた知的財産戦略ビジョンにおいてもその考え方が盛り込まれている。首相官邸ウェブサイト(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html)に、そのメソッドから手法までが紹介されている。
−自律性という “民意” が非常に強いのも、京都の重要な特性だと捉えています。
住田:京都の民意とは、何も考えない市民集団ではなく、非常にレベルの高い集団の考え方を意味しますよね。それは違いますよねと断れる能力と責任を併せ持つ文化がある。洛中には特別な人たちが住んでいた歴史がありますし、外から来た人がおいそれと足を踏み入れずらいところもあるでしょう。場所でそういう制限をしたりして “民のクオリティ” を維持していた。それをどうするのかというのが大きな分かれ道で、それをなくしてしまうと京都ではなくなってしまいますから。
−民意の本質とは何か? それが京都という価値を紐解く重要な鍵になるということですね。
住田:そうですね。京都は本当に個性の塊です。しかも一つのインクルーシブを表していると私は思います。迎合せずに、「あいつとは違う」ことに価値を見出す。いろんな「あいつとは違う」という人が集まる。そして違うけどある意味お互い尊重しあっている。そこがすごく大事で、その人たちが一つのインクルーシブのなかに入ってくる。なんとなく迎合するという社会ではないですよね。それはある種、オープンイノベーションを難しくする要因になるかもしれませんが。 −まさに、自律した個が集まっている状況がいくつも多元的にあることは京都という社会のひとつの表れでもありますね。
(2)地域社会と企業との関わりについて
−企業が地域社会と深く関わり始めようとする動きが日本全体でも少しずつ増えてきているように感じています。今後、企業が地域の社会価値や環境価値の創出に経済価値を結びつけること、さらに今回のプロジェクトでいうと文化価値の創出に経済価値を適切な形で結びつけることも議論していきたいと考えていますが、企業側は地域社会との結びつきにおいて、今後どのような動きを生み出していくことが望ましいと思いますか。
住田:大事なことは、企業にとって自分たちがどのような価値を生み出しているのか的確に認識することであり、同時にどのような価値を生み出したいのかを社会、市場に対して示す、開示・開陳していくことです。私たちはこういう価値を生み出している、生み出したいということを伝えることが投資家に評価されるようになってきている。そのため評価軸も多元的に変わってきている。社会的価値の創出は評価側にとっても重要な評価軸になってきている。創造していく価値を、社会的価値、環境的価値も含めて正確に説明していく。これがすごく大事です。そうすれば、心あるまともな投資家との間ではちゃんと対話することができる。それによって企業の価値、時価総額が決まってくる。世の中の変化を認識しながら、自分の生み出す価値はこれまでは財務価値や経済価値を中心に捉えていたかもしれないけれども、環境価値や社会価値を含めた価値、自分たちが生み出したい価値を明確にして、市場と対話しながら、社会との共有価値が本当は何なのかを追求し実践していくのが望ましいですね。
京都は上から言われてやらない人たちですよね? 放っておいたら企業側から民意として、新しい発想や価値がぽこぽこ出てきた、そういうことを応援する政策が大事です。自発的な動きがあれば応援しますということが京都の政策であってほしいですよね。「行政側と企業が絶対に一緒にやらなきゃいけない」という考え方を一方的に求められると、なかなかやらない気質かもしれない。後押しできるとか、押し付けじゃない政策が重要です。そうすれば、素晴らしいものがいっぱい生まれてくると思うんですね。京都はそういう場所じゃないでしょうか。
(3)創造的都市としての「京都」とは。
−今後、都市全体での創造性を高め、その独自の価値をより一層グローバルな動きや都市の成長へと繋げていくためにも、“京都らしい”オープンイノベーションの在り方をどのように構想していくことが望ましいと思われますか。
住田:京都は基本的に一見さんお断り文化。単に違う文化を入れたらいいのではないかという思想は、「一見さんお断り」的な発想からするとちょっと違いますよね。そこには重要な「審査メカニズム」があるので「一見さん」は審査に通らないんです。オープンイノベーションを妨げると思われるかもしれませんが、それは現在存在している “区切り方”、分野で物事を考えると「一見さん」とコラボすることは難しいでしょう。それぞれの分野のレベルの高いプロフェッショナルが京都にはいる。そういう従来からある分野の考え方ではなくて、新しい切り口でより大きなこと、新しいことを生み出すという課題設定にすれば、特定のメンバーシップを離れた発想が可能になるかもしれない。例えば、「宇宙」とか、今までの発想ではできない切り口での発想が出てくると変わってくるのでしょう。
京都の一流企業がすごいのは、日本の中ですごいのではなく世界で一流なんですね。そもそも京都の企業はグローバルマーケットをターゲットに発想をしている。「グローバルで一番」という視点は、日本の中でも実は京都にしかないかもしれません。「日本一」という発想はないですよね。今のフィールドを超えたものをやってみない? と言い出す人がいれば、オープンイノベーションが可能になってくるかもしれないですね。インテリジェントな京都人から見ても、この人が言うならばという人でないと成り立たないとは思いますが。 すでに素晴らしいケイパビリティがあるだけに、明快な課題、問題設定さえできれば、あとはなんでも実現できる能力がある。非常に知的レベルも高い。社会価値へのシンパシーが強く、利益だけではない哲学的で賢い人たちで、気概も非常にある。オムロンのように哲学者が創業している企業がある。すごくハイレベルですよ、京都は。普通の議論をしていると、京都では意味がないことになってしまいますからね。
−なるほど。非常にレベルの高い「問い」であり「ビジョン」こそが、京都という都市の創造性をより一層高めていく、世界でも唯一の都市で在り続けるということにつながっていくということですね。本日は大変ありがとうございました。
京都市の「カルチャープレナーの創造活動促進事業」*にて採択され実施したプロジェクトの活動報告レポートより抜粋。本レポートは、京都市が目指す「文化と経済の好循環を創出する都市」をテーマに都市構造を読み解き、京都という都市が持続的に発展し続けるための構想を提案しています。
*令和5年度カルチャープレナーの創造活動促進事業〜カルチャープレナー等の交流・コミュニティ創出
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